ピンチランナー調書

 

3日続けて本の話題になっちゃうのもどうかと思ったけど

大江健三郎さんが亡くなったそうなので。

 

その昔、まだ学生だったころ

大江健三郎の小説を「飼育」から始めて時代順に読んでいった。

どれもおもしろかったんだけど「ピンチランナー調書」でつまづいた。

なんだかとても読みづらくて訳がわからなくて、途中で放り出した。

小説を最後まで読まないで諦めるなんて初めてで、ちょっとショックだった。

でも5年くらい経ってもういちど読んでみたら、わからないどころじゃない。

とんでもなくおもしろかった。

たぶん、その5年のあいだに他の本をたくさん読んで

脳の、本を読む筋肉が鍛えられたのだと思う。

重量挙げの重いバーベルを上げるためには地道なトレーニングが必要なように

本を読むにも

その本に見合った脳の筋肉を鍛えることが必要なのだということを

この「ピンチランナー調書」で経験した。

その前もその後も、大江健三郎の小説は全部大好きだけど

「ピンチランナー調書」はそういうわけでわたしの特別な小説になった。

 

大江健三郎さんのご冥福を心よりお祈りします。